TO PARENTS
ボートレーサーとその家族

赤井 星璃菜選手のお母様に聞きました

初めて耳にした我が子の、辞めたい…。

親だけにできること、親だからできないこと、がある。

人は、自力では誕生しない。親がいるから生まれ、家族の中で育まれ、友人、同僚、先輩、後輩、知っている人、知らない人…幾重にも重なった人との縁の中で暮らしている。
当然ながら、ボートレーサーも自力では誕生しない。さまざまな偶然があり、出会いがあり、意志があり、プロセスが存在する。40倍を超える難関を突破し、さらに修了できて初めてなれるのがボートレーサーだ。「置手紙して試験に」「漫画・モンキーターンを読破」「養成所への手紙は何度も下書きした」と語るのは、大阪の赤井星璃菜の母・赤井啓世さん。親としての願いや思いを聞いた。

Q1.どんな子どもでしたか?
A1.とにかく活発な子で、男の子と同じことをするんです。ちょっと無謀というか…。あちこち走り回ったり木に登ったり。まあ動き回るんで、よく服を破いてました。ママゴトなんかしませんし、人形も放ってましたし…。子どもなのに、おもちゃの要らない子でした。ピアノも習字も途中で投げ出したんですが、バレエだけは違いました。4歳から始めて21歳まで足かけ18年続けることになりました。「テクニックは大丈夫。表現力を磨きなさい」と先生からよく指摘されていたのを覚えています。バレリーナは痩せていて可憐な感じの方が多いんですけど、うちの子は細くはない。その代わりよく動きますよ!って感じでした。
ただ、小学校から中学2年生までは本が友達っていうくらいおとなしく、笑顔をほとんど見たことがありません。いじめが社会問題になった頃で、本人に聞いても『教室の掃除を誰も手伝ってくれないからしんどい』って感じで…、ただ自由奔放に過ごしていたわけではないんです。
Q2.選手を志すようになったのは?
A2.20歳の時、何の前触れもなく「イタリアに行ってくる」と言い出したんです。それも教室の手助け一切なしで。いきなり自力でイタリアのバレエ団を探し出しました。インターネットで検索しながらメールでやり取りしていたら、OKが出てしまって…。無謀ですよね。
でも、もともと大学に進学しないでバレエで生活したいと言っていましたから、だったらガンバレ!と励ましました。いま思うと、これがボートレーサーへの起点です。
イタリアでは、「ほんとに来た!」とバレエ団関係者に驚かれたようですが、とても親切にしてもらったと聞いています。探してもらった部屋にいる時、たまたま漫画・モンキーターンをインターネットで読んだそうなんですね。これがオモシロくて、どんどん読んでいった…。お金もないのに、課金して読破してしまったそうです。それに加えて、何の準備もなくイタリアに行ったのでビザが取得できずに3ケ月で帰国することになるんですね。こうしたことが重なってボートレーサーを本気で目指すようになりました。
Q3.実際に選手になるまでの道のりはどうだったのでしょうか?
A3.帰国にあたって娘は、密かにある計画を立てていたようです。「本物のボートレースと漫画は一緒なのか、違うのか、確かめにレース場に行く」という計画です。どうやら、私に怒られると思い黙って行くつもりだったようなんですが、あろうことか住之江の出走表を家の中に置き忘れてまして…。バレてしまいました。「何?これ?」って感じで娘に聞くと、興味があるというので一緒に連れて行ってほしいと頼まれついて行くことに…。一緒にGⅠ太閤賞を見学しました。
娘は、本物のボートレースを見て、「ボートに乗ってみたい」って気持ちが沸いてきて、「乗るには選手になるしかない」と思ったようです。
Q4.ボートレーサー養成所について。
A4.あるとき、飲み会に行ってくるって娘が言うもんですから、何も考えずに送り出したんです。そうしたら、置手紙がありまして…。ボートレーサー養成所の試験を受けに行っていました。結果は1次に合格はしましたが、2次止まり。合格は2回目です。
養成所に入ってからは、厳しい管理下に置かれていますから、自由に外出したり、電話を使用できません。連絡は手紙が主になりました。
ただ、心身ともに相当しんどい時に、変な手紙を書いてショックを与えてはいけないと考え、下書きをしてから読み返し、感情的になっていないか確認してから送っていました。それから、手紙で漢字テストもしていました。手紙に漢字問題を書いて送ると、娘から解答が来ます。それをまた採点・添削っていうやりとりでした。
修了までの間、『赤井は指示されたことができない。適性がない』と言われたこともありましたが、修了できてよかったです。
Q5.選手になってからの様子を教えてください。
A5.優勝劣敗の世界ですから、厳しいことは分かっていますが、娘は良き先輩に恵まれていると思います。話しを聞いたり、様子を見ているとよく分かります。理解をしてくれる方が周囲にいることは、家族としてもとてもうれしいことです。早く成績を…と思う気持ちもありますが、プロの競技者として、成長してくれればと思います。
Q6.家族としての願いや夢をお教えください。
A6.当然、強くなって勝てるレーサーになってほしいですが、事故には気をつけてもらいたいです。正直複雑な気持ちもあります。そして何より、人に恵まれてることに感謝してほしいです。周りの方々のお陰で今がある。勝負の世界にあってもそのことを忘れないでほしいです。その先、努力が報われたらいいなって思っています。