どうなる? 冬の桐生・SGチャレンジカップ

ボートレース桐生専属解説者・関谷聖二を直撃! 「どうなる? 冬の桐生・SGチャレンジカップ」
毎節つけているエンジンノート。着順や機力評価のほか、「流れる」「強襲の伸び」など生きた情報が書かれている。
(1)冬はカド捲りは決まりづらい

桐生は、季節によって風向や風速が大きく変わります。僕は捲りしかできなかったので、南風(向い風)の吹く夏場は稼がせてもらいました。でも、北風(追い風)の冬場はお手上げでした。チャレンジCを開催する11月下旬は追い風の日が多くなり、カド捲りは決まりづらいと思います。

カド捲りが決まるかどうかは、スタートの行き足から伸びを見ればわかります。スタート展示から突き抜けていれば4カド捲りも期待できますが、最近は、そこまで出るモーターはありません。

桐生のもう一つの特徴は、水質です。硬いですね。水の硬さは直線を走るときに強く感じます。ターンでは「グリップ」と呼んでいる、ボートが水に食いつく感覚が違います。海水のレース場はグリップが浅い感じですが、安定しています。桐生の場合は、深くグリップするか、ボートが跳ねてどこかへ飛んで行くかです。

(2)勝てない2コースの差し

コースで言えば、2コースがダメですね。数字上は1-2が1位ですが、最近は1-3のほうが出る印象です。2コースが差したと思ってもインが逃げています。

2コースが差せば、3コースがツケマイ(全速ターン)で攻めます。バックストレッチに出たときは、3コースの選手が前にいることが多いように思います。

ただ、2コースの選手が必ず差すとは限らないので、2コースの選手の性格を読むことも大切です。2コースがツケマイで攻める選手なら、3コースは仕事ができないので、1-4になります。

5、6コースの取捨は、4コース次第です。SGだと全員スタートが早く、横一線のスリットになるので、捲りは決まりにくいでしょうね。

2コースが弱い理由としては、モーター出力が他場より若干弱いからだと思います。

(3)イン逃げは追い風2mまで

スタートに関しても風の影響が強いですね。無風に比べて、1mでも追い風が吹けばスタートが早くなります。

風速2mまでならインがスタートを決めて逃げます。追い風3mくらいになると、インは様子を見る1マークのレバー操作になります。行く気満々の3コースがツケマイを決めます。インで本当に巧い選手は、「当てレバー」でスピードをコントロールして対応しますが、レバーを放る時間が長いと3コースのツケマイに嵌まってしまいます。そんなときには、4コースが差しての3-4が出ます。

7mを超えると水面も荒れてイン逃げが決まらず、万舟が飛び出します。

(4)ナイターは早めに仕掛ける

ナイターでは、デイレースよりスタートを突っ込めますね。デイレースと同じ感覚でスタートをすると、確実にタイミングが遅れます。ナイターの時間帯は大時計の感覚や空中線、標識板の見え方が変わり、ぼんやりと見える感じになります。どうしても慎重な仕掛けになり、スタートの遅れにつながるのです。桐生の風景の見え方は、蒲郡と似ています。また、ダッシュに回ったときのほうが、デイとナイターでの違和感は大きくなります。

この感覚は慣れるしかありません。ナイターではデイレースの感覚を忘れることです。

(5)モーター成績は10月以降で

僕の場合、モーターの調整は全国どこでも同じようにやっていました。プロペラの形もほぼ同じでした。選手持ちプロペラが廃止され、現在の制度になったのが2012年です。7年近く経ち、ヤマト発動機のプロペラの完成度も高くなっています。

今は原型のプロペラを微調整するだけで良いみたいです。最近の主流は、プロペラの形を変えるために使うプロペラゲージに番号が振られており、「今の季節なら何番のゲージを微調整すれば良い」という感じになっています。

チャレンジCでは部品交換も増えるでしょうが、ピストン2本、リング4本、シリンダーケースを交換するセット交換をしても、劇的にモーターが良くなることはありません。

それよりも、10月3日から温水パイプがついて性能が激変したモーターが出てきました。通算成績よりも、期間を10月以降に絞って、乗り手と成績をチェックしてみてください。

(6)くるくるより、ブンブン丸を

桐生では攻める選手が活躍する

消極的な考えが通じないのが桐生です。外から外へ、攻めている選手がターンをしてから前に出ていきます。インから内→内に小回りしている選手は勝てません。ターンが安定しないから小回りで凌いでいると考えれば、納得のできることです。くるくるターンは買ってはいけません。

(7)展示で遅れても、本番は遅れない

スタート展示で注意したい点は、4号艇がピット離れで遅れることですね。ピットから2マークまでの距離が165mと長いこともありますが、4号艇はスタート展示でよく遅れます。しかし、本番ピットではそれが起きません。前付けでもない限り、枠なり進入に落ち着きます。惑わされないようにしてください。

ピット離れ仕様のプロペラを使うこともできますが、あのプロペラは先行できなければ、競りでずり下がります。そこまでのリスクを覚悟でやる選手は限られています。

(8)湿度↑気圧↓のW変化で高配当

高配当が飛び出すのは、前日よりも湿度が上昇、気圧が下がるときですね。ダブルで変化すると、インのスタートが届かなくなります。同じ日でも、デイとナイターでダブル変化があれば、同じようなことが起きます。

関東と関西の選手では、インに入ったときに走る位置が微妙に違います。関東は自分のペースでインから逃げる選手が多いのに対して、関西は捲られないような逃げ方をします。イン戦に強いのは関西の選手でしょうね。

関西の選手のイン逃げが決まっていればイン逃げの回数が増えます。決まらないときは、シリーズ全体のイン逃げが減っているはずです。

(9)半周ラップで「赤が出たら買え」

チャレンジCはSGグランプリ、PGIクイーンズCの出場権を懸けたラストバトルです。ここに出場する選手たちの目標ははっきりしており、メンタル面も技量も差はありません。勝敗の決め手となるのは、モーターの仕上がりです。誰がモーターの力を引き出しているか。それを知るために活用したいのが「桐生オリジナルタイム」です。

最近6ヵ月
半周タイム
順位別2連率

(2019年4月~9月)

順位 2連率
1番時計 55.06%
2番時計 40.50%
3番時計 31.15%
4番時計 27.41%
5番時計 25.16%
6番時計 18.85%

桐生は全国のボート場に先駆けて半周ラップ、まわり足、直線タイムの3つを「桐生オリジナルタイム」として公表しました。

一番大切なのは半周ラップです。地元群馬支部の選手も半周ラップを気にします。特に毒島誠選手や秋山直之選手は、半周ラップに強いこだわりを持っていますね。賞金は出ませんが、つねに1番時計に挑戦しています。

数字の上では半周ラップ1番時計の2連率は55%ですが、インに限定すると90%くらいあるのではないでしょうか。反対に、6番時計はまず着に絡みません。1番時計は赤い数字になるので「赤が出たら買え」ですよ。

実況の中でフリップを使って半周ラップについて解説したものがあるので、紹介しておきます。9月28日のレースです。上が着順、下が進入コースです。

まわり足タイムは、走る位置によってタイムの出方が違います。差しハンドルでブイ際を通過するとタイムが出ます。インから外へ流れるような走り方だとタイムが出ません。選手のタイプに左右されるので、半周ラップのほうが信頼度は高いようです。半周ラップは、本番待機室でも見ることができます。

半周ラップ1番時計の着順

1Rからの着順

1

3

5

1

4

1

1

4

1

1

3

3

進入コース 1 2 6 1 5 1 2 5 3 1 3 4

半周ラップ6番時計の着順

1Rからの着順

5

5

3

5

3

6

6

6

5

6

4

4

進入コース 2 6 2 2 6 6 4 1 5 6 6 2

(色は枠番)

(10)CC選出1位! 地元毒島の狙いどき

地元の毒島選手は、乗り方も工夫して好タイムを出してきます。好タイムを出すときは、ボートを浮かせ、ボートのスターンエッジと呼ばれる左下の個所だけを水に引っかけて小回りしています。

普通ならまともに回れず、大きく流れてしまうようなターンです。しかし、好調時の毒島選手は流れません。このターンができていれば、初日から1着を並べます。

逆に、周回展示で1回でも流れるターンがあれば仕上がり途上です。これはSGで走る選手の共通項でしょうね。毒島選手の調子の悪いときは、いきなり良くなるのではなく、少しずつ調整して最終日に仕上げてくることが多いですね。

まとめ展示航走5つのチェックポイント チェック1 初動 グリップ

初動(ターンのきっかけを作る一発目のハンドル)を入れた直後にボートが跳ねると、操縦不能になります。恐怖心が残ったまま本番に臨むことになります。良いターンはできません。

チェック2 初動後 ターンの安定

初動の延長線上のターンでは、ボートが暴れずにスムーズにターンができているかをチェックします。ボートが暴れるのはグリップが外れており、いつ流れてもおかしくない症状です。

チェック3 ターン後半 滑らず押している

ターンマークを外さずに回るのは、どの選手も心掛けていることです。ターンの後半部でボートが横流れするのは、前に押す力が足りないからです。本番でも前に進んでいきません。

チェック4 比較評価1 6艇の1~3を比較

チェック①~③について、6選手の状態を比較します。各選手が思った通りのターンができているかどうかが比較できます。一つでも欠点があれば、評価を下げます。1周目、2周目の2回、それぞれ行います。

チェック5 比較評価2 1周目、2周目の比較

1周目、2周目の評価を比較します。1周目、2周目とも不安なしがベストです。1周目の欠点を2周目で直せていたら大丈夫、2周とも悪ければ修正不能ということです。

9月開催で前本泰和選手が優勝しましたが、そのときは周回展示で飛沫が上がらず、ターンで前へ押す力が違っていました。半周ラップとともに、この5つのポイントをチェックして、モーターの出ている選手を見つけてください。優勝する選手を、シリーズの早い段階で見つけることができるかもしれません。

“しほみん”こと吉野七宝実ちゃんと、
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(インタビュー&構成/『マンスリーBOAT RACE』 桧村賢一)