the INTERVIEW

 蒲郡PGIレディースCで優出した今井だが、その節で気づいた点が1つある。ターンへのこだわりだ。そのシリーズで、はっきりとしたウィリーターンを見せたのが、今井ただ1人だった。もしかしたら、今井は女子唯一のウィリーターンの使い手か?

 今回の舞台はPGIヤングダービー。男子選手とも互角に戦うべく、意欲を燃やしている。最後のヤングダービーでアピールする。「筋肉女子&ウィリー女子・今井、ここにあり!」

(インタビュー&構成/『マンスリーBOAT RACE』依藤研二・取材日/2019年8月15日)

三国レディースCのフライングが
自分を成長させた

― 三国の今井選手といえば、GI初出場だったレディースC(14年)の予選トップ通過が印象に残っています。

今井 あんなチャンスは、なかなかないんですよね。今回の蒲郡レディースCで優勝した大山千広さんを見ていて、「チーちゃんはすごいな。三国のとき、私もこういう風にできたら良かったのに…」と思いました。

 三国大会での私は、もっとあたふたしていたと言うか、自分に自信がなかったんです。地元は私1人だったし、自分のできること以上のことをしようとして、自分で自分を追い詰めてしまった。未熟だったんですね。だから準優でフライングをしてしまいました。

 けれど、その失敗があったから、今の自分があると思います。

― 今回のヤングダービーも、地元唯一の出場者ですが…。

今井 今は気持ちが全然違うので、大丈夫です。エンジンの状況とか、置かれている立場とか、客観的に自分を見てレースができています。昔の私は「これがしたい」「ここで勝ちたい」と突き進むだけで、客観的な部分がゼロだったんです(苦笑)。

男子に勝とうと思ったら筋肉は絶対に要る

― 蒲郡レディースCでは2日目・第12レースでウィリーターンをしていましたね。

今井 はい。1周2マークでウィリーが上手くできたおかげで、バック3、4、5着争いから2着競りに持ち込めたと思います。その後に競り負けて、結局3着でしたけど…。

― どのようにターンしているんですか?

今井 回った後に、できるだけ後ろに引っ張るというか、推進させたいというか、「進んで!」みたいな感じです。足で蹴って踏ん張るし、ハンドルは引くし。でも、あまりできていない時のほうが多いです。

― いつ頃からウィリーターンをやり始めたのですか?

今井 ウィリーさせることは、デビュー時から意識していました。出走表を見ていない人にも、ターンやモンキーだけで「あれは今井だ!」ってわかってもらえる選手になりたいと思ったのがキッカケです。

 「こんな感じかな」って思えたのが、尼崎で初優勝した頃(14年2月)で、舳先とかを意識した記憶があります。

 でも、浮き方が男子選手と全然違いますね。もっと練習したいですね。

― ウィリーターンにこだわる理由は?

今井 上手い選手って皆、モンキーがカッコ良いじゃないですか。池田浩二さんや茅原悠紀さんのターンはカッコ良いし、やりたいけど、全然できないんです。ターンについては浩二さんに教わったり、馬場貴也さんに聞いたこともあります。

 その中でも、一番お世話になっているのは萩原秀人さんですね。萩原さんに「どうやってそのターンをやっているんですか?」と聞いたら「お前の体重では無理」と言われたことがあります。体重が軽いと負荷が少なすぎて、グッという押しがこないらしいです。

― 今でも十分、男子っぽいターンをしていると思いますが…。

今井 たまに言われます。学生時代にカヌー部に所属していたこともあって、体幹はしっかりしていると思います。その頃から筋肉マニアで、今でも広背筋とか結構すごいんですよ(笑)。

 筋トレ今でもやっています。ウエートトレーニングでダンベルを持ち上げたり、懸垂もやります。今やる懸垂は10回くらいですけど、部活の頃は10回×10セットでした。「筋肉は要らない」という人もいますけど、男子選手に勝とうと思ったら、私は絶対に要ると思います。

 あと、体が柔らかいことも取り柄ですね。私のターンを見た人から「体が柔らかそうなターンをするね」と言われたことがあります。その人には、そういう動きができないらしいです。だから、私のウリは“筋肉”と“体の柔らかさ”ですね。

「え、女子?」って驚かれるターンがしたい

― ヤングダービーは男女混合です。

今井 混合戦は大好きです。燃えますね!

 男子選手と走る場合は、体重が軽いと“当たり負け”してしまいます。“ダーン”と当てて来られると、“ヨレヨレ~”となって飛んで行ってしまうんです。

 だから、前までは体重が44~45kgでしたけど、47kgまで増やしました。筋肉だけではなく、脂肪もあります(笑)。

― モーター出しに関しては?

今井 去年、一般戦回りになったときに、他支部の男子選手から「ターンが自分と似ている」と言ってもらって、調整方法を教えてもらいました。以前はターンだけで勝負という感じだったんですけど、最近は自分に合う乗り心地、ターン足、出足を仕上げる調整方法やプロペラ調整を身につけられたと思います。

― 三国ではどうでしょう?

今井 今年3回、三国を走らせてもらっているんですけど、良いエンジンを引けていません。いつも「引きが悪い」と整備士さんに言われます(苦笑)。その割には、仕上げられていると思いますよ。

― 地元・三国のヤングダービーです。どういうレースをしたいですか?

今井 男子と同じ舞台で走るのだから、同じレベルのターンがしたいです。女子だからこういうターンしかできないとは思われたくない。「えっ、女子がいるの?」って驚くような豪快なレースがしたいです。

 「手堅く着を獲ることが大事。じゃないとコンスタントにシリーズリーダーになれない」とも聞きますけど、私には合いません。卒業年のヤングダービーが地元での開催っていうのも、何か縁があるのだと思います。1等だけを狙って、優勝したいですね。

いまい みあ

1990年(平成2年)8月14日生まれ。福井支部・106期。
2010年5月、三国でデビュー。12年5月、大村・W優勝戦で初優出。14年2月、尼崎・女子リーグで初優勝。14年8月、三国・レディースCでGI初出場、16年8月、津・レディースCでGI初優出、今年8月の蒲郡レディースCで2回目のGI優出を果たした。同期には谷川祐一、森野正弘、岩瀬裕亮、佐藤大佑らがいる。

◆通算成績(2019年8月15日現在)
出走回数 優出 優勝 2連率 3連率
全種別 1,822回 39回 6回 40.0% 53.6%
GI 65回 2回 0回 33.9% 50.8%
◆全国成績(最近3節)
19年 8月 蒲 郡 GI・レディースC 2 2 3 2 2 1 1 3
19年 7月 浜名湖 GII・甲子園 4 5 5 6 2 4 3 3 6
19年 7月 多摩川 一般競走 1 1 3 6 3 2 2 1 2 2
◆三国成績(最近3節)
19年 6月 W優勝戦 1 4 4 1 2 3 1 1 2 2
19年 5月 タイトル(GW戦) 1 3 3 3 3 2 1 6 2 5
19年 3月 W優勝戦 1 2 2 1 2 3 2 1 2 1 2