「ボートレース新時代」の幕開け!
今村豊が全速ターンで世代交代を加速させたように、第28回大会は植木通彦が"艇王"への道を歩み始めた大会である。確か、「フロンティアターン」と実況が呼んでいた。優出メンバーでは飯田加一と植木通彦が革新的なターンの使い手だった。全速ターンの今村も優勝戦に乗っていた。
優勝戦結果
着順 | 枠番 | 選手名 | 支部 | 進入 | ST | タイム |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 1 | 植木 通彦 | (福岡) | 5 | 23 | 1.49.3 |
2 | 2 | 清水 克一 | (福岡) | 2 | 18 | 1.50.4 |
3 | 3 | 今村 豊 | (山口) | 6 | 17 | 1.52.0 |
4 | 5 | 飯田 加一 | (東京) | 1 | 34 | |
5 | 4 | 濱村 芳宏 | (徳島) | 4 | 38 | |
6 | 6 | 野中 和夫 | (大阪) | 3 | 27 |
▲決まり手=抜き
レースは、2コースから捲った清水克一と5コースから全速で続いた植木、2人のマッチレースになった。1周2マーク、先にクルリと小回りした清水の内懐に、植木が全速差しで飛び込む! そのまま2周1マークを先取りしてゴールイン。
そのときのターンが「モンキーターン」と呼ばれるようになるのは、もうしばらく先のこと。ターンの差を見せつけた大会だった。
中道が完璧なイン逃げでSG7冠!
プロペラの時代を迎えていた。最強のプロペラ集団と呼ばれたのは黒明良光をリーダーとする岡山の「イーグル会」である。第31回大会には5名が出場し、井川大作と小畑実成が優勝戦に進出した。
優勝戦結果
着順 | 枠番 | 選手名 | 支部 | 進入 | ST | タイム |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 3 | 中道 善博 | (徳島) | 1 | 14 | 1.48.0 |
2 | 5 | 井川 大作 | (岡山) | 6 | 24 | 1.48.6 |
3 | 2 | 加藤 峻二 | (埼玉) | 4 | 28 | 1.50.7 |
4 | 1 | 小畑 実成 | (岡山) | 5 | 21 | |
5 | 4 | 池上 裕次 | (埼玉) | 2 | 17 | |
6 | 6 | 西田 靖 | (東京) | 3 | 15 |
▲決まり手=逃げ
しかし、優勝したのはキャリア30年のベテラン・中道善博だ。優勝戦当日、中道はピットの3階にある記者席からずっと風を観察していた。午前中はダッシュ向きの風だったが午後から風が変化、インからのスタートが届くようになっていた。その風の変化を、中道は見逃さなかった。優勝戦は完璧なイン速攻で7度目のSG制覇。
優勝インタビューでは、膝の持病を理由に「あと4年で引退したい」。自らの引き際を決めた選手は、やはり強かった。
主役はお化けモーター・36号機!
第37回大会の主役はモーターだった。「36号機に始まり、36号機で終わった」大会である。当時、平和島を担当していた鷲田義継記者(現JLC解説員)が「びわこの『雄琴』もすごかったけど、36号機はそれ以上やで」と絶賛していた。手にしたのは地元の野澤大二。優勝戦は風速15mの強い追い風のなか、カドからコンマ10のトップスタートで一気に捲り、SG初優勝を飾った。
優勝戦結果
着順 | 枠番 | 選手名 | 支部 | 進入 | ST | タイム |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 3 | 野澤 大二 | (東京) | 4 | 10 | 1.49.3 |
2 | 1 | 今村 暢孝 | (福岡) | 1 | 33 | 1.50.5 |
3 | 4 | 滝沢 芳行 | (埼玉) | 5 | 17 | 1.51.4 |
4 | 2 | 松井 繁 | (大阪) | 2 | 33 | |
5 | 6 | 中岡 正彦 | (香川) | 3 | 20 | |
6 | 5 | 平田 忠則 | (福岡) | 6 | 25 |
▲3連単 3-1-4 6,660円(26番人気)
▲決まり手=捲り
それにしても、36号機のプレッシャーは相当だったようで、優勝後の記者会見で野澤は「もう(優勝して)嬉しいのと、(36号機のプレッシャーから)解放されたのと...」。そんなモーターを割って整備したのだから、さぞ勇気のいったことだろう。
現在、36号機は平和島ボートレース場・ベイプラザに飾られている。
艇王・植木に引退を決意させた大会!
"東都のエース"こと濱野谷憲吾は、地元で開催される大会に備えて1ヵ月前から減量に取り組み、前検日には50.8㎏まで落として平和島入りした。
地元のエースの活躍に注目が集まったが、その濱野谷以上に注目を集めたのが"艇王"植木通彦である。植木は予選を13211でトップ通過、準優勝戦もインから逃げて優勝戦1号艇を手にしていた。
優勝戦結果
着順 | 枠番 | 選手名 | 支部 | 進入 | ST | タイム |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 3 | 濱野谷憲吾 | (東京) | 3 | 00 | 1.47.0 |
2 | 2 | 吉田 弘文 | (福岡) | 2 | 05 | 1.48.9 |
3 | 4 | 瓜生 正義 | (福岡) | 5 | 03 | 1.50.3 |
4 | 5 | 井口 佳典 | (三重) | 6 | 03 | |
5 | 6 | 三嶌 誠司 | (香川) | 4 | 06 | |
F | 1 | 植木 通彦 | (福岡) | 1 | +01 |
▲3連単 3-2-4 2,050円(5番人気)
▲決まり手=恵まれ
優勝戦では、当然ながら1号艇の植木に人気が集まっていた。インからやや長めの助走距離を取り、スタートもバッチリ決めた...はずだった。しかし、コンマ01のスリットオーバー。一方、コンマ00で残した濱野谷は、2マークも冷静にさばいて4回目のSG優勝。この年の7月、植木は現役を引退した。