the INTERVIEW

 昨年のまるがめオーシャンカップで悲願のSG初制覇。そして3年連続で年間最高勝率をマークした。いま一番乗りに乗っているのは峰竜太だ。
 その強さを探ると、プロペラ、スタート、ターン、そして一戦一戦の戦略まで、全てにおいてトップ級の実力を備えていることは間違いない。そんな峰でもSGタイトルの栄冠をつかみ獲るまで何度も挫折を味わってきた。そしてたどり着いた境地は? 最強・峰竜太の完成形へと着実に向かっている。

(インタビュー&構成/『マンスリーBOAT RACE』 依藤研二)

みね りゅうた 1985年(昭和60年)3月30日生まれ。佐賀支部・95期。
2004年11月、唐津でデビュー。05年11月、唐津・タイトルで初優勝、09年1月、芦屋・九州地区選手権でGI初優勝。
11年5月の尼崎・オールスターでSG初優出、17年7月のまるがめ・オーシャンカップでSG初優勝を飾った。2年連続得票数1位でオールスター出場、3年連続で年間勝率1位になるなど、人気と実力を兼ね備えた最強レーサーである。

家族や先輩、後輩の応援に応え まるがめで悲願のSG初優勝!

―― 昨年のまるがめオーシャンカップでSG初優勝。真っ先にご家族に報告を?

報告というより、嫁がレース場に乗り込んで来ていたんですよ。ウイニングランをしているときに、手を振っていたのもわかりました。水神祭をしてピットに上がってきた瞬間に、嫁が抱きついて来たんですけど、あれは感動しましたね。やっぱり、家族の支えがあったのだと思いました。

―― 周りの選手たちの反応は?

皆が応援してくれていたんだな、と感じました。その後に三井所(尊春)さんがGI初優勝して、深川(真二)さんがダービーを勝って、佐賀支部全体が活気づいて良い雰囲気になりましたね。

ターンもプロペラもただの技術 強くなるには“気持ち"が必要

―― 峰さんは後輩への指導も熱心です。

今は山田康二、上野真之介、安河内将など7、8人を指導しています。指導で重きを置いているのは、気持ちの部分です。気持ちの強さとか、向上心を持つことについて熱く話していると思います。プロペラとか技術面はアドバイスにすぎませんから。

―― 峰さんの若い頃はどうでしたか?

探究心がありましたね。ターンや、プロペラなど、自分でいろいろと追究してきました。今もありますけど(笑)。昔はわからないことがあったら他人に聞いていたけど、もうそのレベルじゃない。先駆者というか、自分が切り拓いていかないと厳しいところまで来ていると感じています。

―― ターンへのこだわりは?

モンキーの仕方、足の置き方、体重の掛け方とか、僕が作ってきたターンもあると思います。「マネできない」とか言われますから。ほかの人がそれをやると、ボートが暴れてしまうと思います。

僕のターンは“サイドを掛けない”ターンなんです。基本的なターンは、重心を右に掛けてボートのサイドを掛けます。ただ、サイドを掛けるというのはボートに負荷を掛けるということです。負荷が掛かればスピードが落ちます。だから、負荷を掛けすぎずにスピードを落とさないターンをしたかったんです。SGを走りかけた頃から挑戦していたんですけど、3年くらいできなかった。変なターンになるので、一緒に走っている人に迷惑が掛かるんです。「変なターンをしたら危ないだろ!」ってメッチャ怒られました。それでも諦めずにやっていました。

これからも、今のターンで満足することなく、別のターンも磨いていきたいと思っています。僕と同じターンはできなくても、ターンの上手い人はいます。いろんな人の良い所を取り入れて、自分の技を増やしたいし、それができると思っています。

―― スタートやプロペラはどうでしょう。

「スタートは天性のモノ」って言われるけど、僕はそうじゃないと思います。スタートが天性のモノなら、ターンやプロペラ調整も天性のモノだって言える。スタートに重きを置けば、僕も菊地孝平さんのレベルまで行けると思います。ただ、僕が重きを置いているのはスタートじゃない。スタートは今くらいの早さで良いと思っています。

プロペラ調整は僕の得意分野です。ボート界で○本の指に入る、というくらいだと思っています。そこまでやってみて気づいたのが、「強くなるのは、プロペラじゃない」ということです。強くなるには、強い選手は、プロペラじゃない。“気持ち”ですよ。

―― 気持ち、メンタルを鍛えるには?

メンタルって難しいんですよ。強くなったと思ったら一瞬で弱くなるし。努力して自信がつく、そのプロセスが大事です。「できないだろうな」というターンでも、やってみたらできて1 着を獲れた、それが自信になる。だから何度もこのプロセスを繰り返して、小刻みにレベルを上げるしかない。僕も「明日はもう少し上手くなっている」と思ってやっていますから。

―― 今はモーター最優先の時代かと…。

僕は「絶対に優勝できない」というエンジンは各レース場で10基くらい、それ以外なら優勝するチャンスはあると思っています。GIで全然エンジンが出ていないときでも優出したこともあります。モーター抽選なんて何でも良いと思います。

―― 適度な息抜きも必要ですよ。

最近はサーフィンばかりしています(笑)。これが人生に影響が出るんですよ。

波待ちをしていると仕事のこととか、嫌なこととか、いろいろと考えるんですけど、ネガティブな考えが、ポジティブな考えに変わっていくんです。「こんなに良い波に恵まれて、こんなに良い仕事に就けて、こんなに幸せなら何でもいい」とリセットできます。凄いスポーツですよね。

若松オーシャンCの前も、サーフィンをしていました。無風セット肩のメッチャ良い波で、1本の波で初めて4回ターンができて、人生で一番くらい上手く波に乗れた日でした。

SGで勝つのって意外と簡単? 2年前の鳴門で消えたVへの壁

―― SG初制覇の最終的なキッカケは?

2016年の鳴門・オーシャンカップです。僕はどちらかというと「自分なんか…」と卑下する気持ちが強いんです。優勝戦1号艇で負けた蒲郡メモリアル(2015年)くらいまでは、「持っていない」とか、自分にネガティブなイメージがありました。それを完璧に取っ払ったのが、鳴門のオーシャンCです。

あの頃はSGで悪いエンジンしか引いていなくて、30%台のほど良いエンジンを引けたのが、蒲郡と鳴門だったんです。2回とも予選トップ通過、それも鳴門ではブッチギリだったんです。鳴門は準優でフライングをしてしまいましたけど、あれを逃げ、逃げとしたら優勝じゃないですか。そのときに「SGを優勝するなんて意外と簡単じゃないのか」と気づきました。SGで優勝することは難しくないのに、自分の力は既に超えているのに、乗り越えられない壁だと思い込んでいただけだった。鳴門の準優でフライングしたときは、周りの皆は「またダメだったか」という見方をしていたでしょう(笑)。でも僕自身は「これはイケるぞ!」と思っていたんです。

その後すぐに、芦屋のGI(64周年)を優勝できた。このタイミングの良さ! これを引いたらヤバいというエンジンだったんですけど、それで優勝できたんです。メッチャ自信がつきましたね。この優勝がなかったら、鳴門での「優勝できるんじゃないか」という気持ちも弱まっていったと思います。デカい気持ちになったときに芦屋で優勝できた。蒲郡メモリアルは反省の節、鳴門オーシャンCは僕を前進させた節、芦屋のGIは僕を強くした節でした。

だから、まるがめでSG初優勝する前も「自分はかなり強いんじゃないか」「チャンスがあれば獲れる」という自信がありました。それが、まるがめでの優勝に繋がったんだと思います。

狙うのは最高勝率よりSG優勝 目標は全SGタイトル制覇だ!

―― 3年連続で最高勝率に輝きました。

4年連続最高勝率も目指したいですけど、正直、最高勝率とSGタイトルのどちらを目指すかと言えば、SGタイトルですね。

3年連続最高勝率というのは、凄いことをしているという実感がないんです。4年連続は凄い記録って聞くと目指したくなりますが、僕の調子だけじゃないので難しいと思います。白井英治さんとかも調子が良いですよね。とにかく、もっと8点勝率を続けていきたいです。今の目標は“SG優勝量産”ですから。

―― メモリアルへの抱負を聞かせてください。

まるがめはSG優勝できたし、潮の干満や水面も問題ないし、最高でしょう。お祭りみたいに賑わっているナイターの雰囲気も好きです。

オーシャンカップの優勝戦のときは、ファンの方の「峰、頑張れー」っていう声援が凄くて、ほかの5人も僕を応援しているんじゃないかと勘違いするくらいでしたから(笑)。

メモリアルは蒲郡で良い経験も苦い思いもさせてもらっているので、どこかでリベンジしたいなと思っています。今回はまるがめでしょ? まるがめなら助けてくれるんじゃないかと…。いや、まるがめでSG連続優勝して、昨年の恩返しをしたい。こういうのはどうでしょう?

峰  竜太選手 データ室 (2018年7月16日現在)
◆通算成績
出走回数 優出 優勝 2連率 3連率
全種別 3,362回 163回 54回 53.5% 70.5%
S G 413回 14回 1回 44.3% 63.2%
G I 1,029回 28回 7回 42.8% 61.4%
◆全国成績(最近3節)
18年 7月 若 松 SG・オーシャンC 511213511
18年 6月 多摩川 一般競走 1112234
18年 6月 徳 山 SG・グラチャン 412341失(途中帰郷)
◆まるがめ成績(最近2節)
18年 5月 GI・周年 112533643
18年 3月 GIII・企業杯 1125111211
SGボートレースメモリアル 歴代優勝者
開催年 開催場 優勝者
第1回 1955年 大 村 真島 勝義
  豊島  勝(ランナ)
第2回 1956年 鈴木 成彦
第3回 1957年 びわこ 貴田 宏一
第4回 1958年 芦 屋 前田 道積
  山岡 貫太(ランナ)
第5回 1959年 若 松 上原  茂
  松本  稔(ランナ)
第6回 1960年 平和島 井上一二郎
第7回 1961年 宮 島 松尾 泰宏
第8回 1962年 住之江 芹田 信吉
第9回 1963年 下 関 金藤一二三
  倉田 栄一(ランナ)
第10回 1964年 芦 屋 倉田 栄一
第11回 1965年 若 松 芹田 信吉
第12回 1966年 福 岡 金子 安雄
第13回 1967年 常 滑 竹内 淳麿
第15回 1969年 まるがめ 岡本 義則
第16回 1970年 下 関 山田 豊志
第17回 1971年 桐 生 瀬戸 康孝
第18回 1972年 福 岡 彦坂 郁雄
第19回 1973年 下 関 瀬戸 康孝
第20回 1974年 まるがめ 野中 和夫
第21回 1975年 下 関 北原 友次
第22回 1976年 桐 生 渡辺 義則
第23回 1977年 浜名湖 加藤 峻二
第24回 1978年 唐 津 村上 一行
第25回 1979年 まるがめ 野中 和夫
第26回 1980年 常 滑 栗原孝一郎
第27回 1981年 平和島 高峰 孝三
第28回 1982年 蒲 郡 彦坂 郁雄
第29回 1983年 戸 田 望月 重信
第30回 1984年 若 松 北原 友次
第31回 1985年 下 関 野中 和夫
第32回 1986年 芦 屋 倉重 宏明
開催年 開催場 優勝者
第33回 1987年 まるがめ 国光 秀雄
第34回 1988年 浜名湖 松野  寛
第35回 1989年 福 岡 松田 雅文
第36回 1990年 まるがめ 平尾 修二
第37回 1991年 下 関 西田  靖
第38回 1992年 浜名湖 今村  豊
第39回 1993年 福 岡 原田 順一
第40回 1994年 児 島 関  忠志
第41回 1995年 三 国 中道 善博
第42回 1996年 蒲 郡 新良 一規
第43回 1997年 若 松 安岐 真人
第44回 1998年 多摩川 長岡 茂一
第45回 1999年 児 島 山本 浩次
第46回 2000年 若 松 西島 義則
第47回 2001年 多摩川 市川 哲也
第48回 2002年 蒲 郡 今垣光太郎
第49回 2003年 唐 津 田中信一郎
第50回 2004年 蒲 郡 今垣光太郎
第51回 2005年 若 松 菊地 孝平
第52回 2006年 桐 生 中村 有裕
第53回 2007年 蒲 郡 魚谷 智之
第54回 2008年 若 松 今垣光太郎
第55回 2009年 まるがめ 池田 浩二
第56回 2010年 蒲 郡 今村  豊
第57回 2011年 福 岡 瓜生 正義
第58回 2012年 桐 生 瓜生 正義
第59回 2013年 まるがめ 毒島  誠
第60回 2014年 若 松 白井 英治
第61回 2015年 蒲 郡 篠崎 元志
第62回 2016年 桐 生 菊地 孝平
第63回 2017年 若 松 寺田  祥
第64回大会まるがめ
優勝戦
2018年8月26日(日)・第12レース

●第14回(児島)は中止