「地元の大舞台で、嬉しいドリーム1号艇。優勝を狙っていきます」
出場資格が「45歳以上」に引き下げられた昨年は、ボーダー勝率が6.48に跳ね上がった。今年のボーダー勝率は6.54とさらに上がり、ハイレベルな戦いが予想される。
選出トップの勝率7.83で出場するのは「開催が決まったときから、ドリーム乗艇を目標にしてきた」という、地元の前本泰和だ。一昨年はグランプリ初出場を果たし、昨年もGIで2回優勝。選手生活の中で一番脂がのっている今、地元の大舞台への想いを語ってもらった。
(インタビュー&構成/『マンスリーBOAT RACE』武内達也)
前本 泰和選手 データ室 (2019年3月8日現在)
◆通算成績
|
出走回数 |
優出 |
優勝 |
2連率 |
3連率 |
通算 |
6,422回 |
326回 |
108回 |
53.5% |
69.0% |
SG |
368回 |
4回 |
1回 |
28.3% |
45.9% |
GI |
1,167回 |
19回 |
5回 |
35.7% |
51.9% |
◆全国成績(最近3節)
19年 |
3月 |
宮 島 |
一般競走 |
1 1 2 1 4 1 1 3 1 6 |
19年 |
2月 |
下 関 |
GI・地区選 |
6 5 4 1 2 3 6 1 4 |
19年 |
2月 |
蒲 郡 |
一般競走 |
1 1 2 1 3 1 1 1 2 1 2 |
◆宮島成績(最近2節)
19年 |
3月 |
一般競走 |
1 1 2 1 4 1 1 3 1 6 |
18年 |
12月 |
タイトル(正月戦) |
2 5 1 1 1 1 1 4 1 1 |
今の姿からは想像できず。
初優出まで3年、初優勝まで5年
―選手生活26年、大ベテランですね。
前本 少しずつではあるけれど、一歩ずつ前に進んで来られたかなって感じです。レースに対する姿勢も、モーターやプロペラの調整も、デビュー当時から変わっていません。
―思い出に残っているレースはありますか?
前本 一番思い出に残っているのは、大村でのデビュー初優勝(97年3月)です。デビューしてから初優出まで3年掛かったし、そこから2年近く優勝することができなくて。思った以上に時間が掛かってしまったので、優勝できたときは嬉しかったですね。
13年の住之江・GPシリーズでのSG初優勝も嬉しかったです。「ここで獲れないと、もう獲れないだろうな」って気持ちで走りました。
GI初優勝は07年の児島周年ですが、13年の宮島59周年を勝ったときもやっぱり嬉しかったですよ。初めての地元GI制覇だったし、優勝戦は6号艇だったので、勝てると思っていませんでした。その分、気楽に行けたのが良かったのかな。
宮島での開催が決まったときから
ドリーム戦出場を狙っていた
―マスターズCに初出場されたのは昨年の福岡大会です。
前本 特に違う所はなかったですね。年齢制限が45歳以上に引き下げられて、出場メンバーも記念のメンバーだったので、いつも走っているGIと変わらなかったと思います。
ただ、直前の唐津周年優勝戦でFを切ったので、マスターズCは消化不良で終わってしまいました。唐津のFは、勝つためにスタートを行った結果なので仕方がない。進入が乱れたことは関係ありません。全て自分の責任です。
GI優勝戦Fのペナルティーで一般戦回りになった7月以降は、宮島のマスターズCのために少しでも勝率を上げることを考えて走ってきました。悪いモーターを引くことが多かったけど、よくやれたかなと思います。昨年の分も、今回はしっかりレースをしたいですね。
―その結果が、ドリーム1号艇!
前本 地元の大舞台でドリーム1号艇に乗れることは、選手生活の中でも数少ないことだと思います。宮島で開催されることが決まったときから、「絶対に出たい」と思っていましたし、前回大会がドリーム発進だったので、今回もドリームに乗ることが目標でした。2つとも達成できて良かったです。
地元の自分が頑張ることで、お客さんたちが盛り上がってくれれば嬉しいですね。
エンジンを出し、コースは内から。
自分のスタイルは変えない
―前本さんは7節連続優勝記録を持っておられます。勝ち続けられる理由は?
前本 自分はエンジンを出すことが一番大切だと思っています。エンジンが出ていないときには、いくら凄いターンをしても勝てません。
エンジンの性能も少しずつ変わってきているけど、自分たちは決められたことに対してしっかりと対応するだけ。どれだけ早く対応できるかが重要です。昨年1月の唐津周年、2月の児島地区選で優勝できたのは、どちらも良いエンジンを引けたことが大きいと思います。
エンジンはプロペラ調整が中心で、本体を整備することは少ないですね。本体整備は、プロペラ調整では全く反応がないときくらい。決まったプロペラゲージは持っていないけど、まずは一番必要な行き足を求めて、それから体感やそのほかの部分が良くなればと思って調整しています。
もちろん、ターン技術の向上も必要です。進化しているかはわからないけれど、少しずつ乗り方を変えたり、どうしたらターンが安定するか考えながら走っています。
―ピット離れを重視する選手が増えているようですが?
前本 ピット離れに対するこだわりはないですね。最近は“スーパーピット離れ仕様”のプロペラが流行っているみたいだけど、舟足のバランスが崩れてしまうので、舟足をバランス良く仕上げて、コースは駆け引きで取れれば良いかなと思います。
―コースはやっぱり…?
前本 一つでも内から行きたいです。
マスターズCでは簡単にコースを取らせてはくれないと思います。ダッシュからのレースも十分考えられます。
だからといって伸び型で勝負はしません。バランス良く仕上げて、一つでも内から行くレーススタイルは崩しませんよ。
いつ頃から「コースを取りに行こう」って思ったのか…、自分でも覚えていないですね(笑)。若い頃から伸び型に仕上げようという意識はありませんでしたし、プロペラの仕上がりも内向きだったので、内から行ったほうが有利かなって。
地元のお客さんの前で
最高のウイニングランをしたい
―宮島を走るときに気を付けていることはありますか?
前本 選手の皆からもよく聞かれるんですが、「(宮島では)こうしたほうが良い」という調整方法は全くないです。宮島に限らず、今はどのレース場でも内が強いのは一緒。どのレース場でも、やることは変わりません。
「宮島はスタートが難しい」って声も多いけれど、走り慣れている水面なので大丈夫です。
3月の岩田杯では、展示1番時計もありましたし、それなりにエンジンの調整はつかめたかなと思います。中盤以降はスタートも届くようになりました。マスターズCでも、自信を持ってレースに臨めると思います。
―さあ、地元の大舞台です!
前本 宮島のファンの方々には、いつも温かく見守っていただいています。一般戦だと水面際にいる方が少ないので、今回は多くの方にボートレース場に来てもらいたいですね。
レース場の近くには世界文化遺産の厳島神社がありますし、レースも観光も楽しめると思います。
地元選手に限らず、皆が優勝したいと思っているはず。自分も優勝を狙っていきます。大勢のお客さんの前でウイニングランができれば最高ですね。