ドリーム戦
グラチャンは1年間のSGの優勝戦完走者と、予選着順ポイントを基準に選出されるため、「SGの中のSG」とも呼ばれる。その中で菊地は、15年宮島大会、そして前回の鳴門大会に続き、今大会も選出ポイント1位で出場を決めている。このことからも、最近4年間のSG戦線での安定度の高さがハッキリとうかがえる。
この地位を確立したのは、14年の福岡オールスター、浜名湖グラチャンのSG連続優勝だ。当時の菊地が良く口にしていた言葉は「土台固め」だった。2年連続でのグラチャン選出得点1位は、その土台がガッチリ組み上がったことの証明だ。2年ぶりのSG戴冠へ、勝機を見出すのみ。
昨年の平和島ダービーと下関チャレンジCでドリーム戦1号艇、住之江グランプリもトライアル2ndの第12レース1号艇、今年も浜名湖クラシックでドリーム発進を決めている。オールスターでは2年連続でファン投票1位にも輝いた。今では“SGドリーム男”と呼べる存在になった。
厳しい戦いが続くSGではピリピリムードさえも漂うが、峰はただ一人「楽しんで臨む」とマイペース。楽天的にも思える立ち居振る舞いだが、その陰には数々のつらい経験がある。峰にとって「楽しんで」とは「ベストパフォーマンスで魅せる」こと。夢も目標も叶えるために、全力で楽しみ、全力で突っ走る。
浜名湖クラシックは優勝戦1号艇での敗戦だった。コンマ14のスタートを決めてイン先制の旋回態勢に入ったところを、2コースの井口佳典がドンピシャのタイミングで捲りを決めるという展開だった。「白井にミスなし、井口が上手かった」という一戦だけに、白井の悔しさはひとしおであっただろう。
今年は勝負所の1号艇で勝ち切れない悪い流れがあることは否めない。それでも守りに入ることはない。振り返れば14年若松メモリアルでの優勝は、優勝戦でコンマ00のタッチスタートで攻め抜いて「自分らしい勝ち方」と苦笑いも見せた。地元・徳山でのSG開催は64年ぶりのこと。豪快かつ大胆に攻めてこそ白井の走りだ。
負のムードを振り払ってこそのトップレーサーか、いや、トップレーサーだからこそ試練を克服できるのか。思い返せば、デビューから初優勝を決めたのが22回目の優出でのことで、その間に優勝戦1号艇で4回も敗れている。若かりし頃は「桐生は勝負弱い」という印象さえあったのだ。
それも今となっては昔話。優勝戦1号艇で決めたSG、GI優勝は8度もある。昨年のグランプリでは自らの手で優勝戦1枠を引き寄せて優勝を決めた。トップレーサーの絶対的な証となる“賞金王”にも輝いたのだ。近年の課題は梅雨時から秋口にリズムを崩してしまうことだが、今年の桐生はひと味違う走りを見せてくれそうだ。
グランプリ3冠の実績を誇るが、最後にグランプリを制したのは、もう13年前のこと。08年のグランプリシリーズで優勝しているが、10年近くSGタイトルから遠ざかっている。この10年で好不調はあったものの、SG戦線での存在感は変わらなかっただけに、この成績は意外だ。今年の福岡マスターズCでも、機力平凡ながら予選トップ通過を決めている。
一戦一戦の重みや、ここ一番で見せるパフォーマンスの高さは、匠の域に達した感がある。技巧派の代表格として歩んできたレーサー人生、マスターズ世代ともなればその輝きは増すばかり。もちろん、SGタイトル奪還は田中自身も狙い続けるところだ。
昨年のSG戦線では、平和島ダービーまでの6戦で、準優進出を果たしたのは児島クラシックのみ。あとの5戦は予選敗退と苦しい戦いが続いていた。それだけに下関チャレンジCの優勝は爽快感さえもあった。
昨年の戦いから、毒島の走りの真骨頂は“食らいつく”か。調子が良いとは言えなくても上位に食らいつく。食らいついたら逃さない。SG戦線で明確な結果を出せなくても賞金ランク19位でチャレンジCに出場し、そして最後は自らの手でチャンスをモノにした。昨年は底力を身につけたことを証明する1年でもあった。今年も決して快調とは呼べないが、逆にそれが怖い。一度爆発したら誰も止められない強さを見せてくれるだろう。