the INTERVIEW
蒲郡レディースCを制した女王・大山千広、17年の賞金女王・遠藤エミに続き、守屋美穂が獲得賞金3位でクイーンズC出場を決めた。
狙うは優勝、「女王」の称号のみ。多くの良き出会いと巡り合わせに感謝し、令和最初の賞金女王に挑む。
(インタビュー&構成/『マンスリーBOAT RACE』重松伸生)
1989年1月20日生まれ。岡山支部・101期。
2007年11月、尼崎でデビュー。13年2月、鳴門・一般競走で初優勝。18年11月・芦屋レディースCCでGII初優勝、19年7月・芦屋MB大賞で2回目のGII優勝を飾る。GIは14年12月の住之江・クイーンズCで初優出、18年の平和島でも優出した。14年5月、福岡・オールスターでSG初出場、18年の尼崎、19年の福岡にも出場している。
| 出走回数 | 優出 | 優勝 | 2連率 | 3連率 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 全種別 | 2,521回 | 74回 | 12回 | 42.5% | 58.9% |
| SG | 25回 | 0回 | 0回 | 16.0% | 28.0% |
| GI | 187回 | 2回 | 0回 | 27.2% | 45.9% |
トライアルの1枠よりも優勝が欲しかった
― レディースCC連覇へあと一歩でしたね。
守屋 勝つことを意識しすぎたのか、今までに感じたことがない嫌な緊張状態で、思うような走りができませんでした。5日目の予選ラストで納得のいく走りができたので、ようやく緊張を振り払うことができたんですが、遅かったですね。実力不足を感じました。
― 機力劣勢で厳しい戦いが予想されました。
守屋 抽選で53号機を引いたら、近くにいた寺田千恵さんが「引いちゃったか」と。前節に立間充宏さんが使用していて、立間さんから「53号機は良くない」と聞いていたみたいです。
「クランクシャフトを交換するか、セット整備をしたほうが良いみたいよ」とのアドバイスを参考に整備した結果、ターン回りとかが良くなって、優勝戦まで行くことができました。
― 優勝戦はトライアル1枠が懸かっていました。
守屋 私と遠藤エミさんで、先着したほうがクイーンズCのトライアル1号艇に、と話題になっていましたね。私は特に意識していなかったです。優勝することだけに集中していました。結果的に遠藤さんが優勝して、私は3着になったんですけど。
それよりも「優勝戦の1号艇に乗れていない」ことに対して、反省しています。勝ちたい気持ちが悪い方向に出てしまいました。勝ちたい気持ちと自分の走りを上手に繋げることが、これからの課題です。
良い巡り合わせが重なって今の自分に繋がっている
― 昨年後半からずっと好調です。
守屋 寺田さんに「悪いときこそ、しっかり考えて頑張りなさい。そのことがきっと次に繋がってくるから」って言われてから、徐々に調子が上向き始めました。何をやっても上手くいかなくて悩んでいたときにもらった言葉だったので、もの凄く響きましたね。それが昨年の芦屋レディースCCの優勝になり、今年の好成績にも繋がっているんだと思います。
― 寺田さんの助言が転機になったんですね。
守屋 私は“巡り合わせ”の運が良いのかもしれません。振り返ってみると、高校時代はインターハイの重量挙げで優勝しましたが、他の年と比べて記録的にも恵まれた大会でした。やまと学校(現ボートレーサー養成所)の入学試験のときも、たまたま学校でやって覚えていた問題が、学科の試験で出題されました。
― 選手になる前からツイてますね。
守屋 ボートレースの世界に入ってからも、巡り合わせの良さを感じています。尼崎のデビュー戦は 6 6 6 6 6 6 着と6着ばかりで「しょぼいなあ」と思ったんですが、3節目のびわこで3着になり、その勢いで水神祭もできました。
桐生のレディースCCもそうでしたよね。立間さんの乗ったモーターだったから、寺田さんが素性を知っていて、どうすれば良いかを教えてもらえました。先輩や周りの環境に恵まれているなと思います。やっぱり、そういうツキを持っているのかもしれません。
課題を1つずつ克服していくナニクソ根性継承者
― 前期は自己最高の勝率7.53を残しました。
守屋 イン戦に関してはある程度結果を残せているのかもしれませんが、センター、アウトのレースはまだまだ課題が多いですね。着を獲りこぼしていると感じることもあります。上手な選手はたくさんいます。
課題としている部分を克服できるだけの旋回力、判断力をこれからどうつけていくかです。
― 捲りと抜きでの1着が増えているのは?
守屋 最近はエンジンの行き足から伸びが仕上がってくれることが多いので、捲り勝ちが多くなっている要因はそれだと思います。1マークで良い位置が取れれば攻めやすくなります。
抜きも多くなっているんですか? 私の中ではイメージがないですが…。あっ、“ナニクソ根性”です(笑)。
― 寺田さんからは「今の子はナニクソって思わない」と聞きましたが(笑)。
守屋 負けず嫌いなので(笑)。インで勝たなくてはいけないレースなのに、1マークで失敗して流れるでしょう?
差されたときに「2マークで取り返そう」と必死に追いかけているんだと思います。つまり、1マークで勝ち切れていないということですね。
― 本人としては、課題が山積みなんですね。
守屋 そうですね。スタート力も課題です。私はFをしてしまうと、極端にスタートが行けなくなってしまいます。去年、今年とFをしていないのは良いことですが、もっと自信をもって行けるように、スタート力の向上が必要です。
旋回力に判断力、スタート力と、一度にすべての課題を克服するのは難しいです。でも時間を掛けて1つずつ克服していけば、必ず今以上に強くなれると信じています。
頑張れる原動力は努力が結果になったときの感覚
― 高い目標を持っていますね。
守屋 何とも表現できないんですが、1着を獲ったときの感覚というか、「やっていることは間違いじゃなかった」みたいな感覚があって、それを味わいたいんです。勝つほど味わえるから、もっともっと強くなりたい。それが頑張れる原動力になっています。
それに、寺田さんや田口節子さんのような凄い人たちが、一切妥協しないでレースに臨んでいるのに、私が努力をしないわけにはいきません。宿舎でもトレーニングビデオを見たり、体力を維持するために体幹を鍛えるストレッチなどをしています。
新年のお参りにも行きましたよ。今年は金毘羅さんに行きました。一番上まで登って、家族や皆が健康に過ごせるようにお祈りしました。この仕事は健康じゃないと務まりませんから。
― メンタル面の取り組みは?
守屋 メンタルは弱くないと思います。失敗は今後の教訓にしますけど、リセットするのは早いほうだと思いますよ。桐生レディースCCで思うように走れなかったことも、すぐに寝て忘れちゃうんじゃないかな。それが良いのかわからないですが。
寝ることは好きです。この椅子でも寝られますよ(笑)。
― これからの目標は?
守屋 私の大きな目標は、年間表彰の優秀女子に選ばれることです。女子のG1タイトル獲得もそこまでの目標の一つ。去年はレディースCC、今年はMB大賞で優勝したけど、「女王」と呼ばれるには、女子のG1タイトルが必要だと思います。
― 今回勝てば、2つとも達成できるかも。
守屋 そうですね。開催地の徳山は今年2回走って、どちらも優出しています。地元の児島と同じ海水ですが調整の仕方は違うし、モーターの回転の上がりが遅く感じます。
ただ、優出したのは4月と6月。今回のクイーンズCとは気候が違います。気温が低いので、エンジンの出力が上がって調整もしやすくなると思います。
みててください
クイーンズCで女王になる瞬間を
― サインに「みててください」とあります。開会式でもよく聞きますが…?
守屋 「みててください」という言葉は、デビューした頃から使っています。「応援してください」と言えるほどの実力が伴っていなくて申し訳ないと言うか…(苦笑)。レディースオールスターなどでたくさんの票をいただくこともありますが、票数ほど活躍ができているとは思っていません。
ファンの期待に応えるためには、自分自身が頑張って強くなるしかないです。私のファンの方、そうでない方、舟券を買う方、買わない方にも「“成長するのを”みててください」という気持ちで、今の「みててください」になりました。
― クイーンズCは何を“みて”いれば?
守屋 クイーンズCは優勝することしか考えていません。去年は1着からスタートして優出できました。今年のクイーンズCも去年と同じ2号艇からのスタートで、これも巡り合わせだと感じています。今年も1着を獲って好スタートを切りたいと思っています。
女王となって、表彰式でティアラを被るイメージトレーニングをして臨みます。トライアル初戦から全部、みててください。