注目レーサー(チャレンジカップ)

「グランプリを意識できるのは凄く楽しい。今回はまさに“チャレンジ”です」

にしやま たかひろ
1987年(昭和62年)5月15日生まれ。福岡支部・97期。
2005年11月、若松でデビュー。08年9月、若松・タイトルで初優勝、11年11月、大村・チャレンジカップでSG初出場。15年12月の住之江・グランプリシリーズでSG初優出。18年は4月常滑・GIIMB大賞で特別戦初優勝、SGは若松オーシャンC、丸亀メモリアル、蒲郡ダービーに出場した。月刊『マクール』でコラム「西山貴浩 97期の笑利への道」を連載中。


お笑い芸人も顔負けの突き抜けた面白さで、陸の上ではつねに話題の中心となる西山貴浩だが、今年は本業が“超”がつくほど絶好調と言って良い。走り慣れた地元水面の芦屋で開催されるチャレンジカップは有力な優勝候補として、陸の上だけではなく、水の上でも話題を独占する。「SGを優勝する大チャンスだと思っている」と、熱い胸の内を西山らしい軽妙な面白トークで語ってくれた。

(インタビュー&構成/『マンスリーBOAT RACE』石井誠司)

生まれたのも、養成所卒業も
納富英昭教官のお陰…!?

― 西山選手は2005年にデビューしました。なぜボートレーサーに?

西山 家が貧しくてねぇ(泣)。いえ、ずっとポケバイに乗っていて、その延長線上です。同じモータースポーツということもありましたね。
 小学校のときに下関で初めてペアボートに乗った次の日から、ボートに乗りたくてたまらなかった。オヤジがボート好きだったんで、負けを取り返したい気持ちもありましたよ(笑)。

― 養成所では勝率7.09と好成績でした。

西山 僕は最初の成績が悪くて、本当はクビだったんです。当時の納富(英昭)教官に助けてもらって、クビを免れました。成績が上がってきたのは実技のレースが始まってからです。
 ちなみに、僕のお産費用は納富教官の2連単舟券を当てて捻出したそうです。オヤジから話を聞いていて名前は知っていました。初めて会ったときに「あっ、この人だ」とすぐにわかったので、お礼を言っときました(笑)。

― 師匠・川上剛さんとの出会いは?

西山 養成所を卒業後、倉尾良一さんの所に顔を出したら、そこに原田富士男さんと川上剛さんがいました。アメをたくさんくれたから「良い人たちだなぁ」と思って付いて行ったら、とんでもなかったですね(笑)。

― 何でそんなに明るいんですか(笑)。

西山 生後2ヵ月のときに、オフクロと一緒にベットから落っこちて、そこから脳がスパーキングしたと聞いています。家でもこのまんまらしいですよ。小学校の友達とか、久しぶりに会った人にも「お前、変わらないなぁ」と言われるので、ずっとこんな感じなんでしょうね。

攻めが2割、守りが8割。
道中で粘るのが西山スタイル

― 13年でフライングが8本。少ないですね。

西山 デビュー期にいきなりのF2を経験して、「自分はフライングを切らない」と心に誓いました。富士男さんに「ボートレースはスタートじゃない。道中の走りを磨け。ゴンロクを獲るな」と言われたのも大きいですね。実際、当時の富士男さんの平均STは0.27で、一番スタートが遅いA1級レーサーでした。その富士男さんが休みのときは僕の練習に付きっ切りで付き合ってくれた。最近になってグループは解散したんですが、僕の走りの基礎にはそれがずっとあります。
 最後のFは16年、大村の九州地区選です。あれは忘れもしません。自分が1号艇のとき(準優・第10レース)は追い風が7~8m吹いていて、雨もジャージャー降っていて、まるで嵐でした。今村暢孝さんの前付けも食らって、80m起こしから+01のFを切ってしまいました。
 ところがその後、篠崎元志さんが1号艇の準優(第12レース)は雨も風も止み、レース場から見えるイオンには虹が2本も架かっていました。2本もですよ! 「スター性がちゃうやん」と思いましたね。一生、元志さんには勝てないと思いました(笑)。

― では、スタート勝負はしない?

西山 僕のレースは粘っこくて、道中で2、3着を狙うスタイルです。モーターは伸び型よりも行き足と出足、レース向きの仕上がりが好きですね。スタートで攻めるタイプじゃないんで、攻め2割、守りが8割みたいなイメージでレースをしています。守りが最高の攻めになるときもあります。
 もちろん、人間なんで全部は勝てません。負けるときもあります。ただ、負けても戦争のように死ぬことはない。死なないけど、お客さんが舟券を買ってくれているから、「勝たなきゃいけない」という気持ちで走っています。

― 今、黒いフライホイールが話題です。

西山 僕にとって、黒いフライホイールは強烈な追い風でした。今までプロペラのピッチを強くして回転を止めていた人の調子があまり良くなくて、僕みたいにギャンギャン回していく高回転系のタイプにハマってくれた。プロペラを含めたモーター調整が巧くできれば、出足、回り足がしっかりと仕上がってくれます。引いたモーターにもよるけど、大崩れすることがなくなりました。
 黒いフライホイールのモーターの特徴は、回転が上がりにくいことです。ピッチを強くすると、水の抵抗が大きくなって余計回らなくなる。抵抗を小さくして、早く回転を上げるような調整のほうが合うんでしょうね。
 黒ホイールになってから、プロペラの形を変えたのも良かった。今まで使ったことのない形にして使っていたら、「あっ、こんな感じでモーターが出るんだな」というのが、何となくわかってきました。
 モーターを出しはじめると、周りの人や後輩とかが、いろいろ聞いてくるじゃないですか。アドバイスをすると、みんな良くモーターが出るようになるんです。だから、僕のプロペラの形が、黒いフライホイールのモーターに合っているんだと思います。今の問題は、モーターのパワーが上がって回転が上がりすぎる冬場をどう乗り越えるかですね。これからはそこを探りながら調整していこうと思います。

「パパ。それで良いと?」
重い一言とデカい若手の存在

― 今年は賞金18位以内が見えています。

西山 今年は「選手をやってる以上、1回で良いからグランプリ出場を狙ってみよう」と1月1日から思っていました。
 去年の後半はA2級で一般戦回りだったじゃないですか? 自分ではわからなかったんですが、腐っていたんでしょうね。ベロベロに酔っ払っているときに、嫁から「パパ。それで良いと?」と言われました。その一言がデカかったですね。
 仲谷颯仁と羽野直也の存在もデカかった。3艇旋回の練習をしたときに「何だコイツら! すげぇ!!」と感じた。ちょっとレベルが違うなと思った。篠崎兄弟の調子が少し落ちてきたのに、またうっとうしい2人が出てきた(笑)。「こいつらと一緒に上の舞台に行って、ジャマをしてやりてェなぁ」と思った。そこから気合を入れ直した。
 まずは「ダービーに行っちゃろう!」と思いました。罰則で1年間SG除外になって、権利を持っていた鳴門グラチャンにも出場できなかった。だから今年はSGに出る気でした。4、5、6着を獲らず、3連率を上げていこうと思って走っていたら勝率が上がって、優勝回数も増えて、常滑では初めてGIIも勝てました。

― 丸亀メモリアルは開幕3連勝で主役を張りました!

西山 プロペラが当たっていたんで、自信満々で丸亀へ行ったんですよ。あまり良いモーターを引けなかったんですが、案の定モーターが動いてくれた。「ヨシっ!」と思いました。まさか3連勝でスタートするとは…。
 その後、池田浩二さんが部屋に引っ越してきたら、台風で開催が1日中断するし、急にリズムが悪くなった。部屋が悪かった(笑)。

グランプリを狙える順位で
芦屋開催なら大チャンス!!

― 芦屋水面のイメージ、モーター調整のイメージなどはありますか?

西山 芦屋や若松はいつも練習に行っている水面なんで、大好きです。周りも知っている人ばかりで落ち着きます。モーター調整に関しては「これをしなきゃいけない」というような調整法は特にはないけど、ある程度のコツはつかんでいます。良いモーターを引ければ、それなりに出せる自信はありますよ。

― さぁ、大好きな芦屋でのSGです!

西山 僕が本当に強くなるのは5年後ぐらいだとは思いますが、やっとスタートラインに立てた。上への挑戦権を得た感じと言うか、まさに“チャレンジ”ですよね。この時期にグランプリを意識できる位置にいるのは初めてのことだけど、凄く楽しいです。
 チャレンジカップの出場選手は34人しかいなくて、準優には18人が進める。良いモーターは男子の手に渡るし、しかも芦屋。最高のコンディションで挑めるし、芦屋なら緊張もしない。これは大チャンスなんじゃないかとずっと思っていました。
 SGを勝つならどこでも良いけど、やっぱり地元で勝つのが最高ですよ。富士男さんと川上さんへ優勝の報告に行くのが、今から楽しみでしょうがないです。優勝を狙って行きます!


西山 貴浩選手 データ室 (2018年10月28日現在)
◆通算成績
出走回数 優出 優勝 2連率 3連率
全種別 3,331回 124回 29回 47.6% 67.8%
SG 145回 1回 0回 35.2% 52.4%
GI 548回 6回 0回 33.2% 53.5%
◆全国成績(最近3節)
18年 10月 蒲郡 SG・ダービー 5 1 4 3 6 3 1 2 2
18年 10月 戸田 タイトル 2 5 1 1 4 1 1
18年 10月 江戸川 一般競走 3 3 3 5 5 1 1
◆芦屋成績(最近2節)
18年 5月 一般競走 1 1 5 3 5 1 6 2 4
17年 12月 一般競走 2 1 2 2 2 1 1