the INTERVIEW

2022年MVPが
ファンの期待に応えるオールスター。ターンは完成形に近づき、
ウイリーの精度もっと高めたい。

2022年最優秀選手に輝いた馬場貴也(滋賀)が、SG初優勝を果たし、レーサー人生を変えた芦屋で開催される祭典に登場する。芦屋の水面は「芦屋の貴也です!」と選手紹介で挨拶するほど相性抜群だ。自身の想像をはるかに超えた投票に「感謝しかない」と、6日間全力でファンへ恩返しを誓う、MVPレーサーの「ターン」と「捲り差し」に迫る。
(インタビュー・構成/土屋幸宏)

レーサー人生を変えてくれた芦屋
― 2022年はダービーを含む特別戦V4。MVPおめでとうございます。

MVPは光栄でしたが、GI優勝戦や、GPトライアル2ndのインで負けています。大事な場面で結果を出せなかったことが自分の中では大きく、弱さもわかった1年でした。

― 18年チャレンジカップでSG初制覇した芦屋でオールスターです!

芦屋は僕のレーサー人生を変えてくれた水面です。ターン回り、出足を重視する僕の調整にも合うので好きです。ウイリーを考えた時に回転が上がっていないと良い進みに繋がりません。芦屋は回転が上がりやすいので。最近は芦屋の選手紹介では「芦屋の貴也です」と言わせていただいています(笑)。

― 芦屋はタイムが出るレース場です。

昔はコースレコードを出すことにこだわっていました。記録を作ったらメモリアルの施行者推薦で選んでもらえるんじゃないか、と。でもレコードを出して“最速”と言われるようになりましたが、最速だけではダメで、結果を残すことにシフトしていきました。

タイムはある程度条件が揃わないと出ません。冬場の冷えていて、風が吹いていない時に斡旋が入ったらタイムアタックしたいです(笑)。

― デビューして20年目に突入です。

早いですね。チャレンジCを勝って、SGに安定して出られるようになってからは長く感じますが…。もっと早く活躍したかったなとは思います。でも、第一線で活躍されている先輩方は40代、50代ですし、僕もまだこれからなのかなと。若い気持ちで上を目指したいです。最低でも65歳まで現役でいたい。そう考えると、レーサー人生はまだ半分もいっていませんね。

ターンのベースは養成所で習ったこと
― ターンの仕方を教えてください。

ターンマーク(以下マーク)に斜め45度になったらレバーを落としてハンドルを切って、当てレバーをして回るという、養成所時代に習ったことがベースです。それを凝縮して動きを早くする。初動ではハンドルを切っている時だけ一瞬レバーを落とす感じです。

― 全速ターンはいかがですか?

全速ターンをすることはほぼありません。4月10日・宮島周年11Rの捲り差しも、ハンドルを切る時に一瞬落としています。最近ハンドルの入りが悪く、真っすぐ行ってバシッと切りたいのに、若干送りハンドルっぽくなるんです。捲り差しに入る瞬間も、少しレバーを落としています。全速でレバーを握りっ放しでターンしても遅い。ターン中もレバー操作をして、トルクが一番あるところで回らないといけません。ここがターンのポイントだと思っています。

― モンキーは?

立つ時は、つま先からそのまま後ろに、かかとを床につけていくイメージです。立ち上がってからはサイドを掛けるためにボートの右側を蹴るという意識もなく、両足でボートに乗ってバランスを取る感じです。割合的には右と左で、5対5とか4対6とか、どちらかというと左足が軸になります。峰竜太君、茅原悠紀君のように右足だけで蹴るという感じではなく、足の使い方は他のレーサーとは違うのかな。また立つ位置も、少しでも前に立つレーサーが多いと思いますが、僕は逆です。エンジンのパワーがなくなってからは、起き上がった時点で、できる限り後ろに座り、できる限り後ろに立って、ボートの重心を後ろにしています。そうしないとイメージしたウイリーができません。

― そのウイリーは?

ウイリーはボートの右前を浮かせるイメージ、出口は左サイドが接地している感じです。矛盾していますが、右前を浮かせるイメージをしながら、右前を浮かせないイメージも持っておく。ウイリーさせるためにハンドルやレバーを引っ張るというよりは、お尻を左後ろに持っていき、身体全体でウイリーさせます。ハンドルやレバーを引っ張るということに意識を置くと、艇に対して引っ張る方向のベクトルが上に行ってしまいます。それでは浮きません。ベクトルを寝かせないと浮かないんです。

― 昨年のダービー優勝戦で2コースから差した時のウイリーが印象にあります!

あれは少し回転不足の失敗ターンで、GPトライアル2nd3走目に2コースから差し切ったウイリーが完璧でした。

― ターン出口のしゃくりも印象的です!

始めたキッカケは、今垣光太郎さんのしゃくりを見て凄い伸びているなと。それをターン出口ですると一生懸命に見える気がして、ファンへのアピールにもなるかなと(笑)。やっている中で前に進んでいると感じられるようになり、武器になりました。浮いた艇が着地する瞬間としゃくるタイミングを合わせて、艇をよりバウンドさせるのがポイントです。細かくしても、前後でもダメです。これもお尻を使わないといけません。お尻を水面に斜め45度だと行き過ぎで、35度くらい沈み込ませる感じです。水面状況にもよりますが、ウイリーと合わせて最低でも1艇身くらいは変わると思います。

僕の仕上げ方は捲り差しの方が勝率も上がる
― 捲り差しについて聞かせてください。

捲りは伸びて絞りながらじゃないと、なかなか決まりません。僕の仕上げ方で捲りは難しく、捲り差しのほうが勝率も上がるなと。SGはスタートが揃いやすいので2コースが差して、3コースが捲り差しか捲りのセオリー通りのレースが多くなります。捲り差しの精度を上げるようなターン練習だったり、イメージの持ち方に取り組みました。それが上手く型にハマってる気はします。

― 内の艇に警戒されませんか?

僕の1つ内の2、4コースがツケマイ(捲り)することが一時期多かったです。それも頭に入れながら、捲り差しと差し、どちらでも対応できるようにしています。3コースなら最内の2番差しもイメージしています。1コースはマークに寄って落として小回りや、握って出口で艇を返したり、走り方が人によって違います。その選手がどのような走り方をするかはレース前にイメージしています。

― 艇間はどうやって狙うのでしょうか?

マークの際を狙うレーサーもいると思いますが、現在のエンジンではそれだと捲り差しに入り切れないと思います。マークの向こう側で、2~4コースぐらいのどこかを差す感じです。

その意識を持つ理由は、インの航跡にできる限り直角に入りたいからです。ブイ際を意識すると、そこに行きたくなってターンが浅くなります。向こうでどこか差すというイメージなら、真っすぐ奥に踏み込んでターンすることになり、良い踏み込みができて角度がついてくるんです。真っすぐ奥まで踏み込んで、ハンドルをバチっと切れれば、イン艇の視界にも入らないはずです。イン艇にすれば視界からいったん消えた僕が、ターン中に内側を見たらいる、そんな感じですかね。

― 捲り差しが決まる時はどんな感じ?

完璧にハマる時は、ハンドルを切って立つ瞬間に「差さったな」と感覚的にわかります。

ウイリーできるおじいちゃんを目指します
― 今後、ターンは進化しますか?

現在のエンジンの感じを考えると、完成形に近づいていると思います。現状の僕はウイリーの精度を上げにいっています。65歳になってもウイリーできるおじいちゃんを目指します。

― 最後にファンの方にメッセージを。

想像をはるかに超えた得票数で、ドリームにも選んでいただき光栄です。感謝しかありません。自分の持てる力を全て発揮して、6日間ファンのために頑張りたいです。無観客も経験しましたが、クラシックでファンの歓声が上がって、「やっぱこれだね」と選手間でも話していました。ご声援よろしくお願いします。

Profile
ばば よしや
1984年3月26日生まれ。滋賀支部・93期。
2003年11月、三国でデビュー。07年4月びわこ一般タイトル戦で初優勝を飾る。08年1月丸亀新鋭王座決定戦でGI初出場、20年7月のびわこ周年でGI初優勝を果たした。SGの初出場は12年の桐生メモリアルで、18年芦屋のチャレンジCでSG初制覇。22年の最優秀選手。同期には渡辺浩司や長田頼宗らがいる。